シューベルトの交響曲
交響曲
シューベルトは、現在楽譜が残っているものだけで14曲の交響曲の作曲を試みている。そのうち、有名な「未完成」も含め6曲が未完に終わっている。よく演奏されるのは、「未完成」と最後の完成された交響曲である「ザ・グレート」である。それ以外では第5番もかなり親しまれている。
「未完成」はその名の通り、第2楽章で終わっていることからこう呼ばれるようになった。「グレート」という名前はおそらくイギリスの出版社によって付けられたタイトルだと考えられているが、そもそもドイツ語では《Die grosse Symphonie》であり、同じハ長調の第6番に対する「大きい交響曲」という程度の意味であった。シューベルトの交響曲を英語の副題で呼ぶことに抵抗を持つファンも少なからず存在する。
交響曲の番号付け
古い番号付けでは、完成された7曲に順に7番まで番号が振られた。そして「未完成」は、4楽章構成の交響曲としては未完だが、2楽章は完成しており、非常に美しい旋律で多くの人に愛好されているため、8番の番号が与えられた。
他の未完の交響曲のうち、ホ長調D729 は4楽章のピアノスケッチで完成に近く (楽譜に「Fine」と書き添えてあることから、一応は完成したとみなす音楽学者もいる)、シューベルトの死後フェリックス・ヴァインガルトナーやブライアン・ニューボールドらの手によって補筆され、全曲の演奏が可能となっている。
このため、1951年のドイチュの目録では作曲年代順に、ホ長調に第7番が割り当てられ、「未完成」が第8番、「ザ・グレート」が第9番とされた。
しかし、国際シューベルト協会が1978年のドイチュ目録改訂で見直し、第7番「未完成」、第8番「ザ・グレート」とされた。
最近ではこれに従うことが多くなってきているが、さすがに「ザ・グレート」を第7番とするものは減ったものの、1951年のドイチュ目録のまま第7番ホ長調、第8番「未完成」、第9番「ザ・グレート」とされることもまだあり、さらには後述の「グムンデン・ガシュタイン交響曲」を第9番、「ザ・グレート」を第10番とすることもあるなど、番号付けは混乱している。
日本では、NHKがドイチュ目録に合わせて「未完成=第7番」「『ザ・グレート』=第8番」にしている一方で、音楽評論家の金子建志などは「長く親しみ慣れた番号を繰り上げるのは、単に混乱を引き起こすだけ」と考えていて、年輩の音楽学者からの多数の同意を得ている。
交響曲の同定のために調性が使われることも古くから行われてきた。
すなわち、第5番を「変ロ長調交響曲」、「未完成」を「ロ短調交響曲」と呼ぶなどである。
なお、ハ長調の交響曲は2曲存在するので、編成などから、先に作曲された方(第6番D589)を「小ハ長調(交響曲)」(ドイツ語で「ディ・クライネ」)、後に作曲された方(D944)を「大ハ長調(交響曲)」と呼ぶ。「ザ・グレート」(ドイツ語で「ディ・グローセ」)の呼称もここから来ている。
幻の交響曲
シューベルトの手紙に言及があるものの楽譜が見つからず、幻の存在とされてきた 「グムンデン・ガシュタイン交響曲」D849 (1825) は研究により、20世紀末ではハ長調D944 「ザ・グレート」を指している可能性がきわめて高いとされている。
もともと D944 は1828年の作曲と考えられていたためにこのD番号を持ち、D849 とは別であると考えられてきたが、この根拠となっていた楽譜の年号の記述が後世の加筆によると判明し、加筆前は1825年だったものと考えられている。
一時はピアノ・デュオ曲「グラン・デュオ」D812がD849の原曲ではないかと言われ、ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムがその説に基づいてオーケストレーションを施したこともある。
また一方で、近年、シュトットガルトでD849にあたるホ長調の交響曲が発見されたとし、その録音が行われたものもある(演奏時間約50分、編成2222-223、録音SDR、校訂Goldni)。
ニ長調D936Aにはペーター・ギュルケ補筆作曲版、ニューボールド補筆作曲版などがあるが、異色なのはイタリアの作曲家ルチアーノ・ベリオの手による補筆作曲版の「レンダリング」である。「レンダリング」ではスケッチの部分はスケッチのままで、それ以外の判然としないスケッチとスケッチの間の部分は現代音楽の手法でつなぎ合わせている。